ロンドンお疲れ旅行記

【真夏の帝都】


[スイス、フリブール。8月のはじめ。]

 「パリは物騒やな!」父は、スイスに来るなり言っていました。折しも、連続爆破事件で夏のパリは騒然としていました。スイスに遊びに来る前に、父母にはパリに連れて行くと言ってあったのです。

 「パリはあかんから、やめとこか。」父は臆病です。でも、私は、父以上に弱虫です。「そんなら、どうする、他にするか。」「パリがダメやったら、やっぱりロンドンやな。」「先月行ったんやけど・・・。」私は、出張で7月に行って来たばかりでした。母は孫のそばに居たいので、父と二人で行ってきたらと言いましたが、私はそれは勘弁してくれと頼みました。

 スイスには5月から住んでいます。7月末に妻子が、遊びに来る私の両親と共にやってきました。ロンドン旅行は、妻子をスイスに置いて両親だけを連れて行きます。妻には、ホッと一息する時間を与えられるし、両親には親孝行できるし、と考えて決めました。4歳の息子だけが、どうして自分が行けないのか、大いに不満顔でしたが、お土産いっぱいの約束で誤魔化されたのでした。

 旅行手配は、提携会社の旅行係に頼みました。2泊3日、ホテル付き(食事なし)で、3人分2,561.50フランです。これで、私は当分お小遣いなしです。飛行機は行きはスイス航空チューリッヒ発ロンドン・ヒースロー着が取れました。でも、帰りがなかなか取れません。「『ロンドンシティ空港』からジュネーヴ行きだったら、OKだそうよ。私は、この空港良く知らないけど。」係りの女性は勧めてくれました。「ロンドンシティ空港」という、聞き慣れない名前にちょっと躊躇しましたが、他になければ仕方がありません。帰りは、この聞き慣れない空港から、『クロスエアー』というスイス航空の子会社の便で帰ってくることになりました。

 スイスは8月にもなると、若干涼しさが増し、朝晩は肌寒いくらいです。ロンドンも7月に行った時には、天気が悪く、半袖ではちょっと寒いかな、と思える程でした。「ロンドンは暑っついやろか?」「さあ、わからんけど、日本ほどではないやろな。」私はロンドンの真夏を未だ経験してはいませんでした。

 旅行社から、切符と旅程表等が届きました。日程は、下のようになりました。

8.11(金) フリブール駅発IC 09:21
  チューリッヒ空港駅着 11:16
  チューリッヒ空港発R802 12:15
  ヒースロー空港着 13:00
  スカンディック・クラウン・ホテル・ヴィクトリアへチェックイン  
8.12(土) 終日自由行動  
8.13(日) チェックアウト  
  ロンドンシティ空港LX877 19:10
  ジュネーヴ空港着 21:40
  ジュネーヴ空港駅発各停 22:52
  ローザンヌ駅着 23:41
  ローザンヌ駅発快速乗り換え 23:55
  フリブール着 00:50

 「なんやこれ、着くのは夜中やないか。」「仕方ないやんか、これしかないのやで。」(ちなみに、この会話は三重県北部の方言で行われています。)クロスエアーのリーフレットも入っており、ロンドンシティ空港についても説明されています。リーフレット「これで見ると、『ライト・レールウェー』言うのんと、シャトルバスとあるなぁ、心配なさそやな。」自分が甘い事など、いつでも後になって気付くものなのです。

 私は、今度こそ、『オペラ座の怪人』を見ようと考えていました。先月行ったときには、『ホット・ミカド』という、そこそこに楽しいミュージカルを見たので、次は昔から好きなガストン・ルルーの小説を題材にした、この人気の作品を見たいと思っていたのです。父母はまた、それぞれ違う期待を胸に、スイスの涼しい夏を過ごしていたのです。

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