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『片山刑事たち、お馴じみのホームズ一行が訪れたのは、スイスの観光名所ユングフラウヨッホ。気温と気圧の低さにバテ気味の片山は、展望テラスから落ちそうになった、多田靖子を救った。彼女の姉は結婚式の当日、相手が来なかったことを苦に自殺していた。ところが、その相手の男を、靖子がこのヨーロッパで見かけてしまい事件は急展開！一方、靖子の連れが、苦手の「お見合いおばさん」だと知った片山は・・・・・・。
今回もついつい事件に引きずり込まれ大忙し、帰国はいつになるやら、人気シリーズ第14弾！』（カバー裏表紙より）
何年ぶりかで再読した。最初読んだときは、なんだこのご都合主義は！とか、なんだこのいいかげんな謎解きは！とか、思いながら読んだ記憶があるのだが、改めて読んでみると全くそんなことはない、かなり面白いのに気が付いた。もしかすると自分が大人になって寛容になったのかもしれないし、まあ、こんなものさ、と達観する年齢になってきたのかもしれない。そう思うと寂しい気もするが、実はミステリの本当の味がわかる年頃になってきたのかもしれない（笑）。
テレビの２時間ドラマでも有名な、三毛猫ホームズのシリーズである。登場人物の警視庁刑事である片山義太郎とその妹のフリーター晴美は、「男はつらいよ」の寅さんとさくらの役どころとも言える実質的な主人公なのだが、この作品の探偵役はあくまでも彼らが飼っているメス猫の「ホームズ」（にくたらしい名前だ）である。そして、毎回片山が（女性恐怖症にも関わらず）美しい（あるいは可愛い）マドンナと知り合っては惚れられて事件に関わっていくのがこのシリーズのパターン。人気があるのでかなりの冊数(文庫本で2002年末までに３５作目の『三毛猫ホームズの恋占い』が出ていたのを確認した）出ている。この作品はその１４作目に当たり、元々の題名は『三毛猫ホームズの登山電車』。「列車」よりも「電車」の方が合っていると思うのだが、なぜに改題したのだろう。
少し寄り道してテレビ化された三毛猫ホームズのシリーズを語ってみると、まず「土曜ワイド劇場」では石立鉄男が片山を演じて７０年代〜８０年代にかけて六本制作された。この時の相手役は坂口良子なのだが、晴美役ではなく恋人の吉塚雪子役。私は年代的にこのシリーズに一番親しみを感じる。その後火曜サスペンス劇場で故三浦洋一が片山を演じ三本制作された。この時はちゃんと妹の晴美が登場し、小林聡美が演じている（まさに適役）。その後陣内孝則主演で二本作られ、そして２００２年には「モーニング娘。サスペンスドラマスペシャル」と銘打って原田龍二が片山役、飯田圭織が晴美役で制作されている。しかし、何度もドラマ化されているのに、さすがにスイスロケが必要なこの作品は今のところ未だドラマ化されていない。
舞台はほぼ全編に渡ってスイスオンリーだが、まずは「第一章 氷の部屋」に登場するのは、ユングフラウヨッホとグリンデルワルトである。「氷の宮殿」、「テラス」、「登山電車」と観光名所を取り入れながら、なかなか快調に話が進んでいく。「グリンデルワルド」のホテル「レジーナ」は昔から日本人ご用達だ。この間に日本では第１の殺人が判明していた。「第二章 長い暗闇」はそのままズバリである。なんとカンデルシュテックからゴッペンシュタインの間を運んでくれる陸のカーフェリーの中が舞台なのだ。ここで第2の殺人である。「第三章 多忙な夜」はツェルマットに場所を移しての夜中のドタバタ劇、消える死体、迷う片山、そして栗原捜査１課長までもが登場する。「クライネ・マッターホルン」が舞台となる「第四章 山の嘆き」での真相解明は、やはり悲劇的な結末へと導くものだった。
一つだけ、こりゃいくらなんでもダメだ、と思われる描写がある。第一章のユングフラウヨッホからの下り電車についての一文。「登山電車なので、車両そのものが斜めに作ってあり、中の座席も階段状になっている。」赤川先生、「スイス生まれが箱根を走る」強羅のケーブルカーと混同されましたか？
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題名 |
『三毛猫ホームズの登山列車』
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作者 |
赤川 次郎
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発行所 |
角川書店（角川文庫）
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発行日 |
平成八年四月三十日（十九版）発行
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読書歴 |
読了
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