オーストリア・ウィーン

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ウィーンを読もう!

『ウィーン・ブルジョワの時代から世紀末へ』

環状道路建設を機に急激に近代都市へと変貌したウィーン、そして十九世紀末へと至る転換期に経済・文化の中核を新たに担った市民たちの「日常」を復元する。」(カバー表紙より)

 ウィーンが劇的にその様相を変えた19世紀をテーマに取り上げた資料は数多い。この本もやはり十九世紀ウィーンを対象にしてはいるのだが、「はじめに」にあるように「いくらか異なった視点から「ウィーン都市論」を展開して」おり、「帝室のメンバーや宮廷貴族」ではなく、「歴史の「配役」に大きな変化」をもたらした新興の「市民階層の興亡を主題に、伝統的な宮廷都市が近代的メトロポリスへと再生する過程を追うことによって、ハプスブルク王朝史と世紀末芸術論との狭間でともすれば忘れ去られてしまいがちな、ウィーンの活気に満ちた「グリュンダー・ツァイト(会社設立ブームの時代)」に光をあてること」を目的としている。

 したがって、この本は徹頭徹尾市民階層に焦点を当てて、「おわりに」にあるように「まだ田園都市のたたずまいを色濃く残していたウィーンが急速にメトロポリスとして生まれ変わっていく過程に、近代市民階層が実際にはどのような形でかかわっていたのかという問題を中心に考察を進め」ており、勃興する市民階層がいかにウィーンの主役となり、栄華を誇りそしてまた帝国とともに没落していったかを描き出している。その凝縮された内容の濃さとわかりやすさには驚くほど(もちろん新書版なので冗長なページを作る余裕もないからということもあるのだろうが)で、この一冊でほぼウィーン市民階層の世紀末が俯瞰できる。

 著者は早稲田大学の研究者とのことで、92〜94年にウィーン大学へ留学されており、その研究の成果を一般向け読み物として上梓したものと思われるが、巻末に掲載されている独語の参考文献リストは多種多様で現地での精力的な研鑚ぶりが偲ばれる。(2004.2.19)

   題名

ウィーン・ブルジョワの時代から世紀末へ

著者

山之内 克子

発行所

講談社

発行日

1995年11月20日

読書歴

2004年2月読了


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最終更新日08/10/10
初掲載告知日04/02/22

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