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『どうしても不安感や落ち込みから抜け出せないというあなた、自分の本当の心を誤解していませんか？ 人の心は鍛えても決して強くなりません。もっと上手に扱い、育ててやる必要があるのです。本書は、私たちの心のメカニズムをわかりやすく解説。「生きる情熱はエゴイズムが支える」「ホンネの言葉だけが他人との心をつなぐ」など、無気力・自己否定・孤独感を吹き飛ばすヒントを満載！』（カバー裏表紙より） 著者はスイスのコー(Caux sur
Montreux)に本部のある社会運動ＮＧＯ「道徳再武装運動(MRA, Moraｌ Re-Armament)」の日本協会（参考サイト：（社）国際MRA日本協会）理事であったが、平成5年に逝去されたとのこと。
コーはモントルーからほど近いヴォー州の山村で、ＭＯＢのロシェ・ド・ネイ行きに乗ると25分ほどで到着する。この地は、旧オーストリア帝国皇后エリザベート（愛称シシィ）も宿泊したホテルもあった由緒ある山岳保養地なのだが、現在ではリゾートの役目を終えて、ＭＲＡの本拠地としてのみ世界的に名を知られていると言ってもよいだろう。
一度だけコーを訪ねたことがある。ＭＲＡを訪ねたわけではなく、オーストリア＝ハンガリー帝国皇后エリザベートの足跡を訪ねていた時期だったので、シシィの定宿であったコー・グランドホテルを見ておきたかったのだ。コー・グランドホテルは、今では薔薇十字系の神秘主義団体（ＭＲＡとはまったく別の団体）の所有となっているらしく、もちろん中には入れなかったので、外を一周してみた。それだけではつまらないので、何かコーの情報がほしいと思い、ＭＲＡの本部の方に行ってみた。
ＭＲＡの本部は駅から程近いところにある、通称「マウンテンハウス」（参考サイト：Caux MRA）と呼ばれるお城のような塔を持つ大きな建物で、９０年代の「コー円卓会議」で有名だが、元はコー・パレスホテルと言う名の大型ホテルだった。1946年にＭＲＡが買い取り、現在では国際会議場として夏には数千人を世界から集め大いににぎわうのだそうだが、私がコーを訪ねた12月には建物自体が閉まっておりひっそりとしていた。
用のある者はマウンテンハウスの裏の館を訪ねるようにと書かれていたため、せっかく来たのだからと、私は裏手に回って訪ねてみた。館の中からはかなり高齢のご婦人が現われた。私は図々しくも臆面なく、その老婦人にシシィについてご存知のことを聞かせて欲しいと尋ねたのだが、彼女は親切にも招き入れてくれて、少し話をしてくれた。
シシィについての話は別の機会に書くことにするが、私が記念にしたいのでコーの絵葉書はないのか？と老婦人に尋ねると、何種類かを奥から取り出してきてくれた。何枚かを購入して、ついでに御礼の意味で『道徳再武装運動』のパンフレットも買ったのだが、これはスイスに置いてきてしまって今はもう手元にない。
『ＭＲＡ（道徳再武装運動）』（２００１年８月からは日常活動に使用する名称が世界的にＩＣ-Initiatives of Changeとなったとのこと）については、日本の有力政治家も会合に参加したり、有名企業の会長が強力な推進者だったりと、日本でも政財界人の活動を通じてその名前が話題に上ることも多い。元々は牧師だったスイス系米国人フランク・バックマンが始めたキリスト教の運動であり、現在では、キリスト教に限定されない国際的な道徳的な社会・政治運動としての側面が強くなっているようだ。私はＭＲＡと特に縁があった訳ではないが、スイスへ最初の赴任をする前に会社から送り込まれたＯ市にある国際会議場（アジアセンター）の語学教育研究機関で、約一ヵ月宿泊して英語研修を受けた経験がある。
この本と私とスイスとの関係は以上だが、この本はとにかく人生の折り返し点を過ぎて中年に差し掛かった男性諸氏に是非お勧めしたい。私も再読してみたところ、なるほどと思うところを数多く発見できてしまった。もっとも最初に読んだときにはただの道徳本かと思われたが、当時はまだまだ未熟だったのだろう。
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